多焦点眼内レンズについて
多焦点眼内レンズは、遠くと近くのどちらにも焦点を合わせられる遠近両用のレンズです。眼鏡を使わなくても見える範囲が広がるため、快適に日常生活を送ることができます。ただし、以前の視力を取り戻すというわけではなく、単焦点眼内レンズに比べて鮮明さは劣るものの、ほぼ裸眼での見え方に近づくというものです。
見え方の比較
単焦点眼内レンズ
- 焦点が合う距離は1箇所のみ
- 視野が狭くなる
- 焦点は近くか遠くのいずれかしか合わない
- クリアに見える
- 焦点が合う部分は鮮明に見える
多焦点眼内レンズ
- 焦点が合う距離が2箇所以上ある
- 広い視野が得られる
- 近くも遠くも見ることができる
- ピントのシャープさにやや欠ける
- 鮮明さに劣る部分はあるが裸眼に近い見え方になる
術前に角膜表面のカーブや長さを計測して眼内レンズの度数を決定します。この時に誤差が生じ、焦点が合う距離が多少前後することがありますが、これは眼鏡を用いて調節できます。
多焦点眼内レンズが適している方の特徴
多焦点眼内レンズでは、手元にも遠くにも自然に焦点を合わせることができますので、眼鏡を使わない生活をご希望の方に適しています。
事前の注意点
近くも遠くにも焦点を合わせられる長所がある一方で、単焦点眼内レンズより鮮明さが劣ります。なお、見え方は1人1人異なり、術前に確認することは難しいため、術後の見え方が気になる場合は必要に応じて眼鏡で調節することをお勧めします。
多焦点眼内レンズのデメリット
単焦点眼内レンズよりもはっきりと見えない
眼科での視力検査は常に同一条件で実施するため、検査ではよく見えていても、周囲の環境が変わる日々の生活では見えにくくなる場合があります。これは、コントラスト感度が低いと呼ばれる状態です。
グレア・ハロー
グレア・ハローとは、夜間の光がはっきりと見えにくい現象で、単焦点眼内レンズを入れた方より多焦点眼内レンズを挿入した方に多く見られると言われています。手術後早期は不具合を感じても、時間の経過とともに軽快することが多いです。ただし、日々の生活に影響が生じる時には、手術でレンズを摘出することを検討することがあります。
費用
令和2年4月 より多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は、先進医療から選定療養へ変わりました。選定療養では、追加費用を負担して希望する医療サービスを受けることが可能です。多焦点眼内レンズを選択する場合、保険診療で用いる眼内レンズとの差額が自己負担で、その他の医療費は保険適用となります。
多焦点眼内レンズのご相談は当院まで
多焦点眼内レンズは精密に作られた医療製品ですが、患者様の目に合わない度数や、挿入位置が正確でない場合には十分な視力が得られません。治療効果を上げるためにも下記の2点が大切です。
- 術前検査において挿入するレンズの度数や位置を正しく把握する
- 手術では、術前に確認した位置に眼内レンズを装着する
当院では臨床経験豊かな医師と視能訓練士が連携して信頼性の高い検査、手術機器を活用して手術に臨んでおります。気になることがございましたら、当院までご相談ください。